「美しさ」って「性差がない」ことなのかも——『私の少年』高野ひと深 メールインタビュー

#俺マン2016にて第1位に輝いた『私の少年』。これを記念して作者の高野ひと深先生にメールインタビューを行いました。
小冊子に収録できなかった部分も含めたロングバージョンを公開いたします。

『私の少年』

『私の少年』(既刊2巻/双葉社刊)

Q. 着想のきっかけは?
A. もともとは美少女とおじさんの話を考えていたのですが、「性別を逆転させて美少年と大人の女性にしてみたらどうだろう」という思い付きから今の話が生まれました。最初に考えていた美少女のイメージをそのままトレースして脳内で変換してみたら、頭の中に浮かんだおかっぱの美少年と美少女とであんまりズレがなかったんです。なんでだろう?と疑問に思って、今まで私がひっかかってきた美少年(子役だったりキャラクターだったり)をひとつずつあげていってみたら、そのほとんどがそんなに女の子との性差がないような子たちばかりで。「もしかして、『美しさ』って『性差がない』ことにあるんじゃ……?」「それじゃあ、美少女を描く感覚で美少年を描くのは割と間違ってないんじゃないのかな?」と思ったんです。そこで「あ、それなら描けるかも……」を感じました。……でも実際美少年を描き始めると…本当にいまだにうまくいかないことが多くて……(笑)。ですので日々、勉強をさせて頂いております。美少年がんばりたいです。

Q. 最初にイメージしたエピソードやシーンはどんなものでしたか?
A. すごーく先のお話です! ここで言ってしまうとネタバレになってしまう上に、私も文章で説明するのが下手なので控えさせていただきますが……。
もうびっくりするくらいだいぶ先のお話がたくさん浮かんできて、まだ1巻分(1話~4話)の話すらできあがっていない段階で、だいたい第30話前後の話を担当さんとしてたりしました。しかも、メインストーリーになるかどうかもわからないようなお話を。
ですので、1巻~2巻のエピソードは、「私の少年」を描き始めた時には一切浮かんでないお話ばかりなんです。「もう少し進んだら最初に描きたいなと思ったたくさんのシーンがやってくるのかな?」と、それをマンガにできる日を今は楽しみに執筆してます。

Q. 打ち合わせはどんなふうに?
A. 『私の少年』って、打ち合わせの時間がとっっても長いんですよ。短くて6時間、長くて10時間くらい。そのだいたい半分は、エピソードに使われないキャラクターの話をしてる気がします。というか、エピソードに使われないキャラクターの話って、そのキャラクターの生活だったり人生だったりするので、本編で見えている側面よりも情報量が濃かったりするんですよね。それを掘っていくのがとても楽しくて。それで、掘っていくうちにどんどんその子と知り合いになるから、どんどん好きになっていってしまうという……。
すいません、ちょっと脱線してしまいましたね!(笑)

Q. 真修の中性的な造形、キャラクターは男性読者の支持も厚い印象です。造形、性格のイメージはどんなところから生まれたのでしょうか?
A. 男性読者さんにもいいねと思っていただけてとっても嬉しいです! 上でも回答しているように、ぽっと頭の中に浮かんだ真修のおかっぱのビジュアルに、すごくぐっときてしまったので「髪型は何があっても絶対おかっぱがいい! ここだけは1ミリも変えたくない!」ってとこからのスタートだったんです。そうなると「じゃあ、なんでこの子は髪が長いんだろう?」って気になり始めて、いろんな理由を想像して設定画とにらめっこをしていました。
「もしかして、親の趣味?」「何か切れないような約束があるのかな?」とか色々理由と真修のビジュアルをくっつけてみて、最終的に一本まっすぐ通っていたのが今の設定だった、というわけです。
性格については、最初もっとミステリアスな小悪魔っぽい子でいこうと思っていたんですが、多分私1話のネーム描いてるときにすごく……あの……疲れてたんでしょうね(笑)。それで「ああ……癒されたいな……。浜辺のパラソルでぼーっとしてたら、向こうから真修がやってきて『こんな貝があったよ~』って。変な形の貝殻を一個ずつ見せてくれたりとかしてさ……」って、ぼんやり思ってたんです。それが今の真修の性格につながりました。なんだそれ、って感じですよね……(笑)。

Q. ショタ好きである担当編集者のH澤さんのチェックやアドバイスもいろいろとあるようですが、逆にH澤さんに褒められたシーンなどはありますか?
A. 記憶に新しいのが、第8話(第2巻収録)の水着回ですね。あの回はH澤さんが打ち合わせ中すごいしゃべってて、それで私も楽しくなっちゃってはしゃいでたらもうひとりの担当であるK澤さんが「ちょっと待ってください」ってクールダウンさせてくれてましたね。担当のおふたりのバランスがいい! その第8話の下書きを提出した後にそっこーでH澤さんから連絡がきて「なんだなんだ!?」って慌てて電話取ったんですが、なんかめちゃくちゃ褒めていただけました。「ほんとーに感謝しています!! 最高です!! 用事はこれだけです!」って電話が終わったのですごくびっくりしました(笑)。
下書きだけでこんな感激してもらえて大変嬉しかったんですが、その後に控えているペン入れへのH澤チェックのハードルがあがってしまったのでは?って気づいて震えましたね……。

Q. 『私の少年』は元来ショタ好きでない作家さんが描いたからこそ、男性や、ショタでない読者にも響く作品に仕上がっているのではないかと思っています。青年誌という掲載媒体も含め、ショタ好きでない読者というのを意識して気をつけている部分などはありますか?
A. うーん。確か第3話とかそのくらいのエピソードを描いてた時期に「あんまりにもショタ感を押し出しすぎると読者層が狭まるかもしれないので、もうすこし大衆向けに舵をとってみてもよいのかも?」というような声が編集部さんからあがったとお聞きしました。でも、「そもそもその“ショタ”に反応して手に取ってくださる読者層にまず響くものでなければ、マンガの雰囲気がふらふらするな~」と思って「このままでいきます」とお返事した記憶がありますね。
ただ、私自身はそんなに「少年」に興味があるほうではない人間なので「そんな自分を納得させられるようなショタを描かねば!」と張り切っていた結果、ショタに興味がなかった読者さんのもとにもお届けすることが出来たのかな……?と思います。男女年齢問わず、たくさんの方に読んで頂けて本当にありがたいです。

Q. 描いていくなかで気づいた少年の魅力などはありますか?
A. 少年の…魅力……。私はゴリラみたいな青年が好きです。が、そのゴリラが少年だった時の写真を見たりすると、今まで噴出したことのない量の汗と咳が出るようになったので、もしかしたら少しずつ魅力に気付きかけているのかもしれません。

Q. お気に入りのキャラクター、シーンはありますか?
A. メインキャラ2人ももちろん大好きなのですが、実はこの「私の少年」の土台になっていたお話の主人公であった菜緒ちゃんに、個人的にすごく思い入れがあります。
シーンでいうと、お気に入りというのとはちょっと違うかもしれませんが、第8話でプールサイドに座る真修と聡子を黙って見つめる菜緒ちゃんの場面。あの菜緒ちゃんの目が、すごく怖いなって思ったんです。瞳の中から、チリチリとした音が聞こえてくるような、なんかそんな
感情が生まれそうになってない……?って、できあがった原稿を見て自分でもドキッとしました。描いたの自分なのに……!(笑)

Q. 最後に読者の方へメッセージを。
A. 俺マン1位に選んでくださって本当にありがとうございます。私自身、とても驚いております。
これからもマンガは続いていくと思うのですが、読んでくださる方がふとした時に思い出せるようなワンシーンやセリフがつくれたらいいなと。それを目標にがんばって参りたいと思います。
どうぞこれからも真修と聡子を見守ってやってください。

『私の少年』は現在月刊アクションにて好評連載中。なお、美少年好きの担当編集者・H澤さんも絶賛したプール回の第8話「水と光」は第2巻に収録されている。

高野ひと深「私の少年」特設サイト|株式会社双葉社

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